記事内のリンクには広告が含まれています。

「できないこと」には対処療法ではなく根本治療が必要

コラム

「できないこと」の根本原因に対してアプローチする重要性を実感したため、この記事を書きます。

きっかけは、ブロガーのドクダミ淑子さんの記事を読んだことです。

次の箇所からヒントを得ました。

そう、「できない」なら、「できるように頑張る」んじゃなくて、「できる方法に変える」って言うのが大事なんですよね。

出典:ドクダミ自由帳「「できない」への対処方法は、「できるように頑張る」だけじゃない

ここでいう「できない」というのは、仕事の分野のことで考えていただければと思います。これは本当にその通りで、根本原因から直さないといけないよねと思った次第です。

よく言われる「仕組み化」と言われることかもしれませんが、以外と「根本原因」まで探るのは難しく、その方法などを考えてみたので書いてみます。

現状のままではいつか再発する問題

まず、根本原因を放置してしまう弊害を説明してみます。

そもそも発生確率が高くない事象だと、どうしても対策が後回しになりがちです。しかも、予期しない時に起こるから余計にたちが悪い。現状のままその問題を放置していると、「いつか」再発する可能性が残っているからです。

図1 リスクの発生確率と発生時のインパクト 筆者作成

上記の図1は、リスクの発生確率と発生時のインパクトをマトリクスとして表したものです。

発生確率が低い問題や事象は放置しがちですが、その中でも「発生したらインパクトが大きい」ものは特に注意が必要だと思います。長期的な視点で見れば、大きなマイナスになることがあるからです。

そういった「リスクの発生確率が低いが、発生時のインパクトが大きい」事象に対しては、対処療法として処理するだけでは物足りません。根本原因を探してそれを解決しないと意味がありません。

なぜなら、長期的に見れば何度か発生する問題のため、毎回「対処療法」として問題の対処が必要になるからです。塵も積もれば山となるという言葉があるように、長期的に見ればコストパフォーマンスが悪くなってしまいます。

例えばITシステムにおいて、システムがダウンして使えなくなるケースです。システムがダウンすることは相当な影響がありますし、根本的な原因に対して対策をしなければ、事故が起こるたびバックアップなどの暫定対応に労力と時間がかかってしまいます。これらが何回も起これば、システムを使う人と運用する人の双方に不利益です。

それに、発生時の影響が大きい事象については、いくら発生する確率が低くても、対策を講じなければいけません。

例えば、空港での荷物チェックです。飛行機がハイジャックされる確率は相当低いですが、起こった時の影響がものすごく大きい。そのため、飛行機に乗る前に厳重に荷物や身体のチェックがあるわけです。

このように、発生確率が低かろうと、万が一の時の影響が大きいことは、必ず対策しないといけません。

根本原因を変える必要

ここまで根本原因に対して対策する必要を述べてきました。

ドクダミ淑子さん記事の例から抜粋すると、以下の箇所で根本原因に対策しない問題点についてふれています。

さてさて、そんな事務員さんと、ちょっと最近引継ぎの件でもめたことがあります。

それは、「あの書類を送付して、受領された連絡が来たら、あるシステムに受領された旨の入力をする」というフロー。

これがですね・・・抜けてしまっているんですね。

中略

「いつも忘れてしまって、申し訳ございません。今後はこのようなことのないように注意して参ります」
・・・ダメだ。
「注意する」だけじゃ、改善されない。
それは、これまでのやりとりで私は痛感しています。

指摘されてから2~3回は、ちゃんとやるのです。でも、4回目くらいから、また遅れてきて、5回目くらいには忘れている・・・この繰り返しなのです。

出典:ドクダミ自由帳「「できない」への対処方法は、「できるように頑張る」だけじゃない

ドクダミさんが体験した事例のように、その場だけ直ったとしても、根本原因にアプローチしないと再発してしまうことが分かります。

根本原因特定と対策案立案のアプローチ

では根本原因を特定し、どのような対策案を見つければいいのでしょうか。方法はいくつかあります。例えば、なぜを5回繰り返して掘り下げる「トヨタのなぜなぜ5回」が有名です。

ただ、「トヨタのなぜなぜ5回」は他の書籍でも紹介されており、あまりにも有名なので、ここでは一般的ではないと思われる以下の2点を紹介します。

  • アプローチ① ディベート的に考える
  • アプローチ② 因果のマトリクスで考える

アプローチ① ディベート的に考える

アプローチの1つ目はディベート的に考えることです。ディベートとは、ある議題に対して肯定派と否定派に分かれて自分たちの主張を審判または聴衆に認めさせる議論の形式です。

ディベートのフォーマットで考えることで、問題とその原因、その解決策を同時に考えやすくなります。

具体的には、「ケースサイド」と「プランサイド」を同時に考えることで、多面的な見方からその事象を捉えることができます。

「ケースサイド」は必要性を論じるパートで、「プランサイド」と呼ばれる問題の解決性に言及するパートです。その他の用語は以下に示しました。

ケースサイド問題を見つけ、その必要性を探る要素
プランサイド問題を解決し、その有効性を探る要素
問題性現状のままだと起こりうる弊害、悪影響
内因性問題が発生する根本的な原因
解決性
(有効性)
その施策(xx)をすることで解決可能か
不利益その施策(xx)をすることで起こり得るデメリット
用語解説

ケースサイドでは「問題性」と「内因性」、プランサイドでは解決案を実施することによる「解決性」と「不利益」の両方を考えていく必要があります。

図2 ケースサイドとプランサイド

これらを紙に書いたり、頭の中で考えたりすることで、より根本原因の特定がしやすくなり、かつ、それに対する実効性のある対策が立案しやすくなります。

例えばよくあるディベートのテーマでいうと、「日本はたばこを禁止すべきである」というものです。実際に行うかは別にして、それぞれ「賛成」「反対」の立場にたって「ケースサイド」と「プランサイド」を考えて議論する必要があります。

このように、何かのテーマに対してディベート的に「ケースサイド」と「プランサイド」を考えるアプローチが1つ目です。

参考:本の内容をディベート的にまとめてみた記事はこちら↓

アプローチ② 因果のマトリクスで考える

アプローチの2つ目は、因果のマトリクスで考える方法です。

図3 因果のマトリクス

図3が「因果のマトリクス」です。「原因と結果」「過去と将来」の2軸にしたフレームとなっています。

ほんとうの株のしくみ」など、多数の書籍を執筆している山口揚平氏が考案したと思われます。

*実際のオリジナルの作成者は誰か分かりません。分かっている方は教えてください。

山口氏はこの図を「バリュー・マトリクス」と呼び、このフレームを用いてシナリオを考え、企業価値を分析するために用いています。山口氏の著書「デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座」「ほんとうの株のしくみ」「1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法」にも登場します。

山口氏が創業した会社のサイトに説明があります。↓
Valuation Matrix Partner社サイト「VMPの提供価値のコンセプト

今回はこの軸でミスへの対応を考えてみます。「対処療法」と「根本解決」の2つのパターンです。

以下の図4は、因果のマトリクスをもとに、僕がいくつかの内容を書き足したものです。ここでは「ミス・失敗対応のマトリクス」と呼ぶことにします。

ルート①に対処療法として暫定的な対応をしたケース、ルート②には根本解決として恒久的な対応をするケースを書きました。

図4 ミス・失敗対応のマトリクス

この図4のマトリクスを視覚的に捉えることで、原因と対策を考えやすくなると思います。

それぞれのケースを見ていきましょう。

ルート① 対処療法(暫定対応)⇒対策は楽だが、ミス発生リスクは残る

図4 ミス・失敗対応のマトリクス

まずルート①の対処療法のケースです。以下にメリットとデメリットを挙げました。

メリット
デメリット
  • 原因が分かりやすい
  • 対策に時間や労力がかからないことは多い
  • 原因特定から対策まで小さいサイクルで回る
  • 根本原因まで解決できない
  • 不定期でミスやその事象が再発する可能性がある

メリットは、原因が目に見やすく特定しやすいこと、その対策も分かりやすいことです。もちろん、なかなかミスや事象の原因特定が難しいケースもありますが、根本原因を探す過程よりも短い時間ですみます。よって、原因特定から暫定的な対策の実行まで短期間で行えることがメリットです。

一方のデメリットは、根本原因が解決できないこによるリスクが大きいまま残ってしまうことです。例えば病気でも完治しないと再発のリスクがあるように、ミスや失敗事例の根本原因を解決しないと、思わぬところで再度発生することがあります。

ルート② 根本解決(恒久対応)⇒対策に時間はかかるが、ミス発生リスクは減る

次にルート②のケースです。以下にメリットとデメリットを挙げました。

メリット
デメリット
  • 根本原因まで解決するので、問題やミスの再発可能性を0に近づけられる
  • 解決後は同じ問題の発生リスクを低めに見積ることができる(再発することに怯えなくてよい)
  • 根本原因特定が大変(時間や労力など)
  • 対策も長期的、かつ、労力がかかることがある

*副残物:物事を深く考える癖がつく。チームなら相乗効果もあるかも。

メリットは、根本原因に対して対策を打つため、同様の問題が将来的に起こる確率を0に近づけられることです。

一方のデメリットは時間がかかること。根本原因の特定も時間がかかるケースも多く、その原因が難しいものであったり解決が難しいものであるほど、対策に時間や労力がかかります。

総じて、時間はかかるけれども、将来的なリスクを減らしていけることになります。

ルート①対処療法とルート②根本解決のバランスを

ルート①の対処療法とルート②の根本解決にはそれぞれメリットとデメリットがあります。

もちろん、ルート②の根本解決が全てできれるにこしたことはありませんが、プライベートにおいても仕事においてもリソースは限られます。

図4 ミス・失敗対応のマトリクス

そのため、最初はルート①の対処療法を行い、計画的にルート②の根本解決の取り組むなどの柔軟な対応が必要です。

注意点は、ルート②の根本解決には時間と労力がかかることで、「心理的」にも敬遠しがちなことです。ルート①の対処療法の方がある意味で楽なので、そこでとどまってしまいがちです。そのため、基本的にはルート②の根本解決を最初の目標においておくと良いでしょう。

人間は易きに流れやすいですから、ルート①対処療法の後に「時間があればルート②根本解決をしよう」と思っても、もほとんどやりません。

より確からしい「ボトルネック」を見つける

ここまで根本原因を見つけるアプローチの方法を2つ紹介しました。

この章では、この時に気をつけるべき概念と、その特定方法例を紹介します。

それは、「バリア」という概念です。何かというと、「それを変えないと問題が起こり続けてしまう障壁」のようなものです。例えば、何かの法律があって、その法律があることで解決しない問題があれば、それは「バリア=障壁」です。

他の言葉でいえば「ボトルネック」ですね。これを変えないと意味がなありません。

ボトルネックを見つける方法例

このボトルネックを明らかにするための方法はいくつかあります。

  • トヨタのなぜなぜ5回=なぜを5回繰り返す
  • ロジックツリーを書いて深く掘る
  • KJ法で抽象化しつつ、そのあと評価していく

*KJ法:まずは思いつく限りのアイデアを出し、その後に同じようなグループをまとめていく情報整理法。発明したのは文化人類学者である川喜田二郎氏。彼のイニシャルをとって「KJ法」と呼ばれる。

先ほどの章で紹介したアプローチ「①ディベート的に考える」や「②因果のマトリクスで考える」をやってみて、さらに気になる項目について、上記の方法を試すと良いと思います。

その中で「ボトルネックっぽいこと」を候補として見つけましょう。

参考

読書猿 (2017)『問題解決大全』フォレスト出版
思考のボトルネックを解除しよう!のページ

暫定的な「ボトルネック候補」を決める

先ほど「ボトルネックっぽいこと」の候補を挙げましょうと述べました。ここであえて「ぽい」と書いたのは、それが「ボトルネック」ではないかもしれないからです。その「ボトルネックっぽいこと」に対する対策を実行した時に、それが間違っていれば、効果がないからです。ひどい場合には、さらに状況が悪化することもありえます。

そのため、「ボトルネックっぽいこと」を挙げた後には、その中から「より確からしいボトルネック」を吟味して絞ってください。「より確からしい」とは、その時点で最も効果的なという意味です。別の言葉でいえば「その時点でのベストな選択肢」になります。

この項目の冒頭でも書いたように、どんなに吟味してボトルネック候補に対して対策を実行しても、それが効果的かどうかはやってみないと分かりません。しかし、ボトルネック特定段階においては、「より確からしい=その時点でのベスト」な選択をすべきです。

とはいえ、その吟味の時間をかけすぎても良くありません。ある程度時間を決めて、より確からしい「ボトルネック」にあたりをつけてください。

ただ、ここでいう「時間」については、扱う案件によって異なるので注意が必要です。

ダイエットや身近なものなら割とすぐに見つかるかもしれません。しかし、ビジネスのプロジェクトにおける大事な意思決定や、投資先の分析などの場合はアクションの影響力が大きいので、その分長く吟味の時間をかけたほうが良いです。ボトルネックを絞り込む時間については、柔軟に変えていく必要があるでしょう。

根本原因には対策を!できれば仕組化を!

根本原因が見つかり、ボトルネックが分かれば、それに対して対策を考えます。

注意点は、この対策が1回または短期間で根本原因を解消してればいいのですが、そのようなパターンは多くありません。簡単に解決するケースもありますが、楽ではないと思っておいた方が良いでしょう。

そのため、1回で対策を終えようとするのではなく、継続的に実行できる対策が望ましいと思います。もちろん、扱う案件やテーマによって異なりますので、その点は各自で調整が必要です。

継続的な対策として挙げられるのが「仕組み化」することです。チェックするフローを業務や生活に取り込み、マニュアルに追加するなどがその例です。さらにはITツールを利用することも有用な手段となります。

また、根本原因に対して対策を実行したら、その後の効果を計測することが大事です。対策したことで満足してしまい、根本原因が解決していないままのことがあります。「どのような状態が根本原因が解決しているといえるか」を定義した上で、対策の効果を計測していければより良いでしょう。

計測することでその対策の「効果」が分かり、そこで初めて仮説として立てた「ボトルネック候補=より確からしいボトルネック」の良し悪しが分かります。

「根本原因」を探すのは大変だし面倒。だからこそ探す癖をつけよう

ここまで「根本原因」とその対策についてつらつらと書いてきました。とはいえ、半分は理想論だと思っています。なぜなら、根本原因を探してその対策をするのは労力がかかるからです。別の言葉でいえば面倒くさい。

しかも、次のようなことばかりに意識が向いてしまいがちだと、余計に根本原因が見つかりづらいです。

  • 表面的なこと
  • 目に見えること
  • 短期の時間
  • 感情的なこと

でも、面倒くさくて大変なことだからこそ、根本原因を探して対策が実った時の効果は大きいし、他の人と差別化できる部分だと思います。

だから、一息時間をとって、「根本原因は何なの?」と問う習慣があると良いと思います。それが癖になればベストですね。

自戒をこめて。

参考文献

本記事を書くきっかけとなったブログ記事↓

本記事に登場した書籍↓

本記事を書くにあたって刺激を受けた書籍↓

重要な問題の中で、解決できるものを絞って着手すべきという主張。根本原因の特定がと対策に全てのリソースは注げないので、「イシューはどれだ?」の基準も必要だと感じさせられた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました