営業利益ではなく粗利益に注力すべき理由~中西太著『粗利「だけ」見ろ』を読んで~

仕事・ビジネス

ビジネスを投資をする時に必ず意識する利益として、営業利益があります。

営業利益とは、売上総利益(粗利益。以下、粗利益)から販管費と一般管理費を引いた額です。簡単に言うと、その事業の利益額ということです。

この営業利益やその利益率である営業利益率を見ることで、その事業でいくら稼げているのか、効率がどれだけ良いのかが分かります。

一般的な会社はビジネスで利益をあげることが主な目的ですから、この営業利益を見ることで、その会社の本業の成績が知れるのです。

こういったことから、営業利益を意識することの重要性が語られています。

しかし、その営業利益ではなく「粗利益」だけを見ろという主張があります。

その内容が、コンサルタントの中西宏一氏の著書『粗利「だけ」見ろ 儲かる会社が決して曲げないシンプルなルール』でまとめられています。

*主に中小企業向けに書かれている本です。しかし、会社規模に限らず、どのビジネスにも共通するエッセンスが詰まっています。

そこで今回は、この本を読んで考えたことや学んだことを中心に書いていこうと思います。

もちろん、営業利益ではなく粗利益に注力すべき理由も説明します。

著書『粗利「だけ」見ろ』を一言で言うと

この本の主張を僕なりにまとめると、以下のようになります。

目標の当期純利益から逆算した粗利益を設定し、その粗利を稼ぐために売上アップと原価削減に注力することで、結果として利益が残る

こうして一言で表すと、一般的で当たり前のことを言っているように感じるかもしれません。

しかし、この主張の裏には、しっかりとした理由がありました。

売上よりも利益が大事

経営では売上よりも利益が大事と言われることがよくあります。これは、次のようなビジネスとして良くないパターンがあるからです。

売上ばかり見ていてその支出を意識せずにいると、売上は大きいにも関わらず、支出も大きくなってしまい、結果として利益が少なくなってしまう

ではその売上よりも大事と言われる「利益」には、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、一般的な会計で使われる5種類の利益を示したいと思います。

利益は5種類

  • 売上総利益(粗利益)
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益

1. 売上総利益(粗利益)

まず「売上総利益(粗利益)」は、売上高から売上原価を引いた利益のことです。

単純に、提供する商品(またはサービス)をいくらで作って(または仕入れて)、いくらで売って、その差額はいくらだったかを示しています。

安く買って高く売れば利益が出ると言いますが、この考え方で出る利益はこの粗利益の部分を指しています。

2. 営業利益

次に 「営業利益」は、会社の本業のビジネスで儲けた利益額のことです。

計算式は、売上総利益(粗利益)から販売費と一般管理費を引くというこのです。販売費と一般管理費を合わせて「販管費」として呼ばれることが多いです。

この販管費には人件費などがあります。

3. 経常利益

続いて「経常利益」ですが、これは会社の副業によって得た利益のことを指します。

計算式は、営業利益に営業外収益を加算し、そこから営業外費用を引きます。

営業外収益の例には、株式等からの配当金があり、営業外費用には借金によって支払う利息などがあります。

4. 税引き前当期純利益

4つ目の利益である「税引前当期純利益」は、経常利益に平常ではない臨時の収入や支出を含めます。

具体的には、固定資産の売却益や火災損失などです。

計算式は、経常利益に特別利益を足し、そこから特別損失を引きます。その計算で出た利益は、税金を納める前の利益のため「税引き前当期純利益」と呼びます。

5. 当期純利益

最後の「当期純利益」は、会社がその期間に稼いだ最終の利益ということになります。

計算式は、税引き前当期純利益から法人税等を引きます。

この当期純利益から株主への配当が配られたりするため、注目される利益の一つです。

当期純利益から逆算した必要粗利額を設定

著者の中西さんは、「当期純利益」でいくら残したいかを設定し、そこから逆算して「必要粗利額」を設定することを奨めています。

毎期どれくらいの収入と支出があるかはある程度分かるはずですから、それを元に「目標粗利額」を決めるのです。

そして、その利益額に近づくような意思決定や行動をとることで、結果的に目指していた「当期純利益」に近づけるといいます。

営業利益ではなく粗利益に注力すべき理由

しかし、その目標となる当期純利益を目指すなら、逆算した目標となる「必要営業利益額」を設定してもよいはずです。

なぜなら、営業利益は会社の本業を指すものですから、その本業としての利益額を設定することで、その事業自体を見直すことになるからです。

ですが、筆者は粗利益と主張します。それはなぜなのでしょうか。その理由の一つは、著書で語られていた以下の部分であると判断しました。

明らかな経費の垂れ流しはやめたほうが良いと思います。しかし、そうでないなら一般管理費の中の細かな経費削減には、そこまで力を入れなくてもよいと、私は思っています。

そもそも細かな経費を削減しても、そこまで大きな削減にはなりません。仮にコピー用紙を節約し、使用料を年間100枚減らせたとしても、たいした金額にはならないでしょう。

・・・(中略)

そのような細かな節約をするなら、紙や電気を使ってでも、材料費や外注費である商品の変動費をより安くする施策を真剣に練った方が良いと思うのです。

第2章 「粗利」だけを見れば業績は上がる より

つまり、営業利益の算出に使われる「販管費」は、減らせるとしてもたかが知れており、それよりも粗利益の算出に使われる「売上原価」を安くしたり、「売上高」を上げるための施策の方が効果があるということです。

粗利だけを見ることの効用

では、このように粗利益に絞って考えてビジネスすることのメリットは何でしょうか。本書の内容から、僕なりにまとめました。

理由1:インパクトが大きい。

粗利益の構成要素は「売上高」と「売上原価」です。この2つを変えることによるインパクトが大きいことが、1つ目の理由です。

なぜなら変動の可能性が大きいからです。

売上高と売上原価は、どの取引先と組むか、交渉をどうするかなどの裁量的な部分が多く残されています。それらを工夫することで、粗利益が大きく変わってきます(*その具体的な方法が本書に書かれています)。

もちろん、変動の可能性が大きいということは、これらへの施策がマイナスに働くこともありえます。

例えば、売上原価を安くするために部品を調達する取引先を変えたところ、商品の性能が落ちてしまい、かえって売上高が大きく減ってしまうという具合です。

しかし、プラスにもマイナスにも振れる可能性が大きいからこそ、プラスに働いた場合のインパクトも大きくなり得ます。

また、この部分の工夫や改善に継続して取り組んでいけば、どうすれば上手くいくか、どのようなパターンの時に失敗するのかといったノウハウも蓄積されるでしょうから、成功する確率も高まるはずです。

理由2:やることが明確になる

2つ目の理由が、やることが明確になることです。ここで言う「やること」は何かというと、目標粗利額に近づけるように「売上高」を上げて「売上原価」を下げる意思決定・施策・行動をすることです。

そもそも著者は、社長が社員に対して下記のように言ってもほとんど効果がないと語っています。

「売上ではなくて利益が大事だ」

「最終的に残る当期純利益を意識せよ」

なぜ効果が期待できないかというと、社員は当期純利益まで意識できないからだそうです。

純利益は最終的な利益ですあり、あらゆるコストを引いて残るお金のことですので、日常的にどんなコストが掛かっているかを把握していないと、どれくらいの純利益が残るかイメージしにくいのです。

簡単にいえば、現場で働く社員から見て純利益という言葉がピンとこないということです。

・・・(中略)

PLの中で上にある項目ほど個々の目標としてイメージしやすく、なおかつ売上至上主義に陥る可能性も避けられるという点で、粗利は目標として適しているといえるのです。

第2章 「粗利」だけを見れば業績は上がる より

でも経営で大事なCF(キャッシュフロー)や時間軸の観点が書いてない?

読み進めていて粗利を見ることの重要性は納得できました。しかし、僕は「キャッシュフロー」や「時間軸」の観点が書いてないなと感じました。そこで、もう一度読み直すと、、、

時間軸はについては書いてあった。でもCFは書いていないかも?

と思いました。

時間軸について

時間軸について直接言及があったわけではありません。毎月の定例会議を開き、進捗を確認して施策を打つことで、必要粗利額を稼ぐことが書かれていました。

この会議では、資料を準備し、現状と必要粗利額との差異を確認します。ここでの資料は過去データだけではダメで、最新のデータが必要になります。

また、「取引先との契約可能性をA,B,C」で管理して進捗に組み込みます。その上で、現状と必要粗利額との差異を洗い出すのです。

その差異をいかに埋めるかを、各メンバーが施策を考え出していくことに、この会議の目的があります。

目標粗利益を達成する期限は決まっていますから、この会議によって、必然的に時間軸を意識しないといけなくなるのです。

CF(キャッシュフロー)について

このキャッシュフローについては、あまり書かれていませんでした。

その理由としては、キャッシュフローを回すだけの健全なファイナンス状況があることが、この本が推奨することを行う上での大前提にあるからからもしれません。

敗因分析よりも勝つための分析が大事

最後に、この本で大切だなと思ったことを紹介して終わります。

それは、「現状と必要粗利額」とのギャップを知り、その施策を考えるための定例会議での方針として語られていました。

その内容は、

敗因分析よりも勝つための分析が大事

ということです。

確かに、なぜダメだったか、必要粗利額に達しない原因は何かと、敗因に目を向けることで見えてくることもあるでしょう。

しかし、それらの分析も、未来により良い結果を出すために行なっているはずです。もっと言えば、将来勝つために、長きに渡って稼ぎ続けために行っているこではないでしゃうか。

そうであれば、勝つための分析に注力することがより重要だと感じます。

なぜなら、人は失敗に目を向けやすいからです。それは、生物の進化過程として、失敗を強烈に記憶することで生き延びてきたからです。

例えば、ある生物が毒キノコなどの毒を見分けられずにいたとしたら、その生物は絶滅してしまうでしょう。

少し話が逸れましたが、人間というか生物は、失敗を意識せざるを得ないのです。

ですから、失敗という敗因に目を向けるのは自然とできるはずです。

ということは、それ以上に未来の成功へ向けて何が必要かを分析するは、意識的に行うべきだと思います。

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