人は、実際には「今」という瞬間を生きることしかできません。ただ、意識の向け方によっては、時間の感じ方をより豊かにしていく余地があるように思われます。
その一つの考え方として、「過去」「今」「未来」という三つの時間軸を同時に意識しながら過ごす方法があります。何も意識しないときと比べ、時間の密度が高まり、経験の深さが変わっていく可能性があります。
物理的には「今」しか存在していませんが、思考の世界では複数の時間軸を自由に行き来することができます。
「過去・今・未来」を感じながら日々を過ごすことで、ひとつの出来事を多層的に捉えられるようになり、体感としての時間が広がっていくことも考えられます。
3倍の時間を味わう方法
この考え方は、一つの瞬間を複数の時空間として見る発想に基づいています。どこに意識を向けるかによって、同じ時間でも受け取れる情報量が変わっていくようです。
相対性理論でも示されるように、時間は体感によって伸び縮みします。楽しい時間が短く、退屈な時間が長く感じられるのは、誰しもが経験していることでしょう。
このように時間の感じ方は主観に左右されやすく、意識の向け方によって「体感時間」が変動することも十分にあり得ます。
たとえば、食事の時間でも、今の味わいを楽しむだけでなく、料理がどのような経緯で作られたのかという「過去」や、食べたものが未来の活動につながっていくという「未来」へ思いを向けることができます。
複数の時間軸に触れることで、同じひとときでも広がりが生まれ、体験そのものが豊かさを帯びていくかもしれません。
物理的な処理スピードを上げることは有効だが限界がある
行動のスピードを高めることで時間を活かせる場面もあります。ただし、身体の動作にはどうしても限界があり、無理に短縮しようとすると負荷が増えることも考えられます。
そこで、身体の動きだけでなく、思考という「情報空間」に意識を広げる視点が役立つことがあります。
「今」だけではなく、「過去」や「未来」へも自然に意識を向けることで、時間に対する感覚が変化していくことも十分に可能でしょう。
こうした意識の使い方は、日常のひとときを豊かにするきっかけとしても働いてくれそうです。
参考:読書や投資での例
三つの時間軸を同時に意識する例として、読書や投資はわかりやすい題材といえます。慣れてくると、自然に複数の視点が行き来することもあります。
また、三つの視点を往復しているうちに、新しく調べたいことや、次の行動が浮かび上がってくる場面も出てくるでしょう。
どのような意識の向け方が自分に合うのか、ゆっくり試しながら探っていくのも良い選択かもしれません。
読書の例
今:読んでいる本の内容を理解する
過去:その主張が過去にどのように扱われてきたのかをふり返る
未来:得た知識が今後どんな影響をもたらすのかを考えてみる
投資の例(バリュー投資家の場合)
今:現在の株価や財務状況を確認し、割安かどうか判断する
過去:会社や業界の動きを知り、その背景を理解する
未来:価値がどのように変化していくのか、期間と根拠を見立てる
投資の例(デイトレーダーの場合)
今:チャートや相場の動きを把握し、現状を読み取る
過去:過去のチャートや似た相場を思い起こし、傾向を考える
未来:現在の動きがこれからどうつながっていくのか、複数の展開をイメージする
仕事の例
今:現在取り組んでいるタスクや会議で求められていることに集中する
過去:これまでの経験や、成功・失敗の記憶を振り返る
未来:今日の判断が今後の方針や成果へどのようにつながるかを思い描く
人間関係の例
今:相手の表情や言葉に注意を向け、その瞬間のコミュニケーションを味わう
過去:これまでの出来事や関係性の流れをふり返る
未来:今日の対話が、これからの信頼やつながりにどう影響するかをイメージする
創作活動の例(文章・音楽・絵など)
今:目の前の作品づくりに集中し、手を動かす
過去:過去の作品や影響を受けた表現を思い返し、ヒントを得る
未来:作品が誰に届き、どのような変化を生むのかを想像する
まとめ:三つの時間軸を意識すると、日常の密度が変わる
私たちは物理的には「今」という瞬間を生きていますが、意識の向け方によっては、過去・今・未来を同時に味わうことも可能です。
複数の時間軸を柔らかく意識しながら過ごすことで、同じ時間の中に広がりが生まれ、体感としての豊かさが育っていくように感じられます。
どのような向き合い方が自分にしっくりくるのか、無理のない範囲で試しながら探ってみてください。小さな気づきが、日常の密度を静かに変えていくきっかけになるはずです。
参考文献
この記事のテーマである「体感時間の変化」や「時間軸を意識した思考法」について、より深く学びたい方には次の書籍もおすすめです。
- 苫米地英人『超「時間脳」で人生を10倍にする』宝島社
- 苫米地英人『苫米地思考ノート術』オープン・エンド
- ひろさちや『奴隷の時間 自由な時間』 朝日新聞出版
- 小池 龍之介『考えない練習』小学館


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