記事内のリンクには広告が含まれています。

ちきりん著『自分の意見で生きていこう』をディベート的に整理してみた

読書感想文・本の紹介

ちきりんさんの書籍『自分の意見で生きていこう』をディベートで使う要素で整理してみました。

整理とはいっても、ディベートで使う以下の考え方を使ってまとめるというもので、要約とは違うのでご注意ください。

  • トゥールミンロジック(後で説明しますが、主張の型だと捉えてください)
  • ディベートで争う4つのポイント

ただ、そこまで難しいものではないと思います。むしろ、本書を読んでいない人でも読んだ人にとっても、何かしらの気付きがあるはずです。

この記事では、同書の主張の一つである以下の内容を、ディベートで使う要素で整理していきたいと思います。

自分の意見をもつとは、賛成反対も含めた自分のポジションをハッキリさせるということ。オリジナルな人生を歩むために、まずは自分のポジションをとる練習から始めよう。

私は大学の時に少しディベートをやっていた時があるので、ディベート的に考えるメリットは実感しています。

この記事はディベートそのものをするわけではありませんが、『自分の意見で生きていこう』という本の整理・まとめの一助になれば幸いです。

最初に、

  • トゥールミンロジック(後で説明しますが、主張の型だと捉えてください)
  • ディベートで争う4つのポイント

を紹介し、その後でそれぞれを使ってまとめていきます。読みやすいところから読んでみてください。

関連記事(『自分の意見で生きていこう』を読んで考えたことシリーズ)

トゥールミンロジックの6つの要素

トゥールミンロジックとは

トゥールミンロジックとは、イギリスの分析哲学者のスティーブン・トゥールミンが提唱した論証モデルのことです。トゥールミンモデルとも呼ばれます。

トゥールミンロジックの主な型は「主張」「データ」「理由付け」です。根拠を「データ」と「理由付け」に分けている点は覚えておいて損はない考え方です。

よく、コンサルタントの方が書かれるビジネス本にある「空・雨・傘」と呼ばれるものと同じです。ただ、もっと前からある考え方です。

トゥールミンロジックは他にも「裏付け」「反証」「強度」があります。次で説明します。

基本の型と6つの要素

トゥールミンロジックは次の6つの要素があります。

  1. 【主張】:Claim:根拠と論拠から展開される主張
  2. 【根拠】:Data:主張を裏付けている事実やデータ
  3. 【論拠】:Warrant:理由付け。根拠が主張を支えている理由
  4. 【裏付け】:Backing:論拠や根拠に対しての裏付け
  5. 【強度】:Qualifier:論理の強さ、定性的な正しさ
  6. 【反証】:Rebuttal/Reservation:反証可能性/留保条件=例外

1~3までの「①主張」「②根拠」「③論拠」が基本の型です。そこに4~6「④裏付け」「⑤強度」「⑥反証」があることで、論証がより強固になります。

言い換えると、1~3は主張する時に最低限必要な要素であり、さらに4~6があることで「主張がよりもっともらしくなる」といえます。

ディベートで争う4つのポイント

ディベートで争う4つのポイントは次の通りです。

  1. Harm(問題性):現状で起こりうる問題、弊害
  2. Inherency(内因性):問題(弊害)の構造的な根本原因
  3. Solvency(解決性):問題(弊害)を解決する度合い
  4. Disadvantage(不利益):起こりうる不利益

ディベートとは、あるテーマに対して「賛成」「反対」の立場に分かれ、観客(または審判)を説得するために議論すること

「①Harm(問題性)」と「②Inherency(内因性)」は、ケースサイドと呼ばれる必要性を論じるポイントです。

一方で「③Solvency(解決性)」と「④Disadvantage(不利益)」は、プランサイドと呼ばれる「有効性」を論じるポイントになります。

ディベート的な『自分の意見で生きていこう』の整理

次の項目から整理していいきます。

方針としては以下です。

  • 本書の内容を、ディベート的な要素でまとめます。まとめ方は私の解釈の一つです
  • 本書の文言そのまま引用する場合は、引用で表現します
  • ディベートで争う4つのポイントで整理します。実際のディベートでは4つのポイントとトゥールミンロジックの6つの要素それぞれに反論して勝負するわけですが、今回は省略します

主張と前提の確認

主張(『自分の意見で生きていこう』でのメッセージの一つ)

  • ディベートにおける「テーマ=議題」にあたります

自分の意見をもつとは、賛成反対も含めた自分のポジションをハッキリさせるということ。オリジナルな人生を歩むために、まずは自分のポジションをとる練習から始めよう。

前提(『自分の意見で生きていこう』で語られていたこと)

ディベート的な整理の前提として、本書で語られていたことで重要なメッセージを抜粋します。

  • 人生には正解がある問題と正解がない問題があると知れ
  • 人生には正解がない問題の方が影響度が大きい
  • 答え合わせはいらない

ケースサイド(必要性)

主張の必要性を論じるパートです。

Harm(問題性)

  • Harm(問題性):現状で起こりうる問題、弊害

日本では自分の意見を持たない人が多い。このことで以下のHarm(弊害)がある。

①自己決定できる人生(好きなことでをして生きる)から遠かってしまう
②卓越した才能を潰してしまう
③個々人が自分に合った多様な生き方を手に入れる可能性をつぶすリスク
④何かあった時に冷静かつ迅速に対応策を考えられない

①自己決定できる人生(好きなことでをして生きる)から遠かってしまう

  • 意見を言わない人が多すぎる
  • 背景にはSNSの助長がある(反応なのに意見と勘違いする、ストレス消費としてのSNS)
  • 正しい人生というプレッシャーにつながる

意見を言わない人が多すぎる

「なんであれ自分の意見を明確にするのが当然」という人は、そこまで多くないと気づいたからです。なにかについて意見を問われても「よくわかってもいないのに、意見をもつなんて不可能」とか「間違っているかもしれないから、意見を言うのは不安」などと怖れている人が想像以上に多いと気がついたのです。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』はじめにより

意見より反応を発信する人のほうが圧倒的に多いのは、意見を言うのは大変だけれど、反応するだけなら簡単だからです。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第2章より

背景にはSNSの助長がある(反応なのに意見と勘違いする、ストレス消費としてのSNS)

意見の表明にはスキルやエネルギーが必要だったのに、SNSが「考えないと発信できなかった時代」を、「考えなくても発信できる時代」に変えました。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第2章より

正しい人生というプレッシャーにつながる

ワンパターンな生き方をあるべき姿として全員に目指させることの弊害は、さまざま形で表れます。たとえば「女の子は女の子らしく、男の子は男らしく」といった考えもそのひとつでしょう。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

②卓越した才能を潰してしまう

「友達なんてひとりもいないけど、運動なんてまったくできないけれど、自分の好きなことについてなら24時間、365日、集中していられる子」は、もしかすると、その分野でノーベル賞級の研究者になれるかもしれません。
(中略)
それなのに、学校をはじめとうる社会はこういう子にも「運動も勉強も頑張って文武両道を目指せ!」と求めがちです。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

③個々人が自分に合った多様な生き方を手に入れる可能性をつぶすリスク

興味のもてない学校の勉強に多大な時間を費やすように強制され、好きなことに没頭することも許されず、さらには「勉強のてきないダメな子」という烙印を押されてしまうなんて本当にかわいそうです。
(中略)
そういった「正しい道への矯正」を通じて、勉強なんて得意でも好きでもない子供たちの多くが自信や自己肯定感を失い、「好きなことをやりたい。でも、それは私のわがままなのかも」などと惑わされてしまう。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

④何かあった時に冷静かつ迅速に対応策を考えられない

実際になにかが起こってしまったあとでは、冷静かつ迅速に対策を考えられる人など存在しません。突然、当事者になってしまったほぼすべての人が、パニックでなにも考えられなくなり、オロオロしたり立ち尽くしてしまいます。
(中略)
だから誰であれ「今のところ自分には関係ない」と思えることでも、事前に考えておくか、少なくとも「必要なときにはいつでも考えることができ、すみやかに自分の意見を明確にできるよう」訓練しておく必要があるのです。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

Inherency(内因性)

  • Inherency(内因性):問題(弊害)の構造的な根本原因

①学校的価値観=「すべてに正解がある」という刷り込み

結論から書いてしまえば、生きづらさ問題の背景にあるのは、「学校的価値観」ではないか、というのが私の仮説です。
(中略)
このように「人生にも(算数などと同じように)正解がある」と誤解してしまうと、それがなんらかの理由で手に入らない人にとっては、とても「生きづらい」世の中になってしまいます。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

プランサイド(有効性)

主張の有効性を論じるパートです。

Solvency(解決性)

  • Solvency(解決性):問題(弊害)を解決する度合い

①自己の確立(自分を知る)

自分はどのような人間なのか、自分で自分という人間を理解することこそ、私が日記を書く目的だったのです。それは一種の自己探求プロセスともいえるものです。私にとって「自分の意見をもつ」というのは、自分自身と向きあって自我を確立し、ひとりの人格として自立するために、すなわち、大人になるために不可欠な行為でした。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

私はいつも「あなたの意見は?」と聞かれたとき、それがなんであれどう答えるべきか明確にしておきたいと考えていたのです。なぜならそれこそが「私」という人間だからです。そして、その(自分のアタマで考え、自分の意見を明確化する)プロセスを通して、私は「私」になりました。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

②意見をもつ良い練習になる(プライベートことや会社などで意見を求められた時に使える)

意見を明確にするための練習には、「今のところ自分には無関係なこと」のほうが実は向いています。なぜなら人間誰しも、自分が当事者になってしまうと、冷静かつ大局的に考えることが難しくなるからです。

反対に、自分に無関係なことなら感情的にならず冷静に考えることができるし、手元にある情報も少ないので、考える際の複雑性も高くありません。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

③他者に等身大の自分を知ってもらえる

そうやって自分の意見を次々と言語化していくことで、副産物として他者にも私の人格(キャラクター)が伝わりました。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第4章より

一定量以上の「意見」を表明すると、ある時点から、その「意見の集合体」がその人の自我や人格を形成し始めます。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第2章より

Disadvantage(不利益)

  • Disadvantage(不利益):起こりうる不利益

①反応しかしない人に攻撃される

*本書による「意見と反応の違い」

「自分の意見を言う」とは、「自分のポジションをとること」だともいえます。発言によって「その人がどこに立って発言しているか」が明確になっていれば、それは「意見」だといえるのです。一方、それらしく聞こえても「その人のポジション(立ち位置)がどこなのか、わからない言葉」は、意見ではなく反応に過ぎません。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第2章より

「意見が違うのはあたりまえ」「意見には正しいも間違いもない」と理解できていない人は、すぐに〝クソリプ〟と呼ばれるくだらない=クソのような無価値な返答をしてしまいます。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第1章より

意見を言う人の多くは、「反応しかしない人」にイチャモンばかりつけられ、消耗しがちです。

ちきりん『自分の意見で生きていこう』第5章より

ディベート的に整理した内容を並べてみるとストーリーが見えてくる

ここまでディベートで使う要素で整理してきました。

これらを並べてみると、”結果的に”本書のまとめにもなりえます。『自分の意見で生きていこう』のストーリーが見えてくるわけですね。

以下に例を書いたので、ぜひ

  • トゥールミンロジックの6つの型
  • ディベートで争う4つのポイント

がどこに入っているのかを考えながら読んでみてください。それぞれの要素で”反論”を考えることで、より理解が深まると思います。

『自分の意見で生きていこう』のまとめ例

本書が言いたいことを、ディベートの要素で捉えて文章にしてみました。間違っている点、反論すべき点があればぜひ考えてみてください。以下はあくまで一例であり、唯一の正解ではありませんので。

現状の日本では、意見を言わない人が多いです。背景にはSNSの助長があります。このことで次のような問題が起こっています。

①自己決定できる人生(好きなことでをして生きる)から遠かってしまう
②卓越した才能を潰してしまう
③個々人が自分に合った多様な生き方を手に入れる可能性をつぶすリスク
④何かあった時に冷静かつ迅速に対応策を考えられない

なぜこのようなことが起こるのかというと、そこには学校的価値観があります。学校的価値観とは、「すべてに正解がある」という刷り込みとも言い換えることができます。

ではどうすればいいのでしょうか。まずは前提知識として以下を認識してください。

  • 人生には正解がある問題と正解がない問題があると知れ
  • 人生には正解がない問題の方が影響度が大きい
  • 答え合わせはいらない

これらを認識した上で1番にすべきことは、「自分の意見をもつこと」です。自分の意見をもつとは、賛成反対も含めた自分のポジションをハッキリさせるということ。

社会の様々なことに「自分の意見をもつこと」によって、自分を知ることにつながり、他者に等身大の自分を知ってもらえるようになります。

また、普段から意見をもつ練習を行うことで、いざプライベートや仕事で意見を求められたときに、より確かしい意見をもつことができます。冷静な時だからこそ、自分に関係ない問題を考える価値があります。

そうすることによって、後悔しない選択をすることができ、ひいては自分のオリジナルな人生につながるのです。

もちろん、自分の意見をもつことによって、「反応しかしない人」にイチャモンばかりつけられ、消耗してしまうこともあるでしょう。

しかし、意見を出し続けることによって、必ず評価は高まります。「反応しかしない人」に惑わされる必要はないのです。

多くの人が持つ学校的価値観(=「すべてに正解がある」という刷り込み)から解放され、

①自己決定できる人生(好きなことでをして生きる)から遠かってしまう
②卓越した才能を潰してしまう
③個々人が自分に合った多様な生き方を手に入れる可能性をつぶすリスク
④何かあった時に冷静かつ迅速に対応策を考えられない

ことにならないためにも、まずは自分の意見をもつことから始めましょう。自分の意見をもつとは、賛成反対も含めた自分のポジションをハッキリさせるということです。

最初は少しずつでも大丈夫です。だんだん自分なりの意見がもてるようになります。

自分の意見がオリジナルな人生につながります。自分の意見で生きていこう。

関連情報と参考文献

関連情報

関連記事(『自分の意見で生きていこう』を読んで考えたことシリーズ)

関連リンク

レファレンス共同データベース「トゥールミン・モデルとは何か? この理論をわかりやすく紹介している文献を知りたい。」近畿大学中央図書館 2022/1/30アクセス

参考文献

コメント

タイトルとURLをコピーしました