この記事では2020年に読んで良かった本を紹介します。前回は仕事関連の本だったので、今回は教養に関する本です。
【筆者のプロフィール】
・アラサー会社員(システムエンジニア)
・年間200冊以上を読む(オーディオブック含む、小説・漫画含まず)
泣く泣く選ばなかった本もありました
200冊以上読んだ本のなかから、おすすめの10冊を選びました。
*なお、発売年が2020年以外の本も含みます。
おすすめの10冊(教養編)
【社会・ノンフィクション3冊】
・時間資本主義の時代(松岡真宏)
・社会的共通資本(宇沢弘文)
・デス・ゾーン(河野啓)
【読書・学習に役立つ3冊】
・リベラルアーツの学び方(瀬木比呂志)
・知的再武装 60のヒント(池上彰、佐藤 優)
・わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる(Dain)
【文化・芸術について知る2冊】
・日本マンガ全史(澤村修治)
・感性は感動しない(椹木野衣)
【実用書2冊】
・お金の大学(両@リベ大学長)
・「繊細さん」の本(武田友紀)
この記事で紹介する「教養(リベラルアーツ)」についてですが、今回は「ビジネス・仕事以外の本」という定義で選びました。
本来リベラルアーツは自由七科のことを指します。自由七科は三学(文法学、修辞学、論理学)と四科(算術、幾何、天文学、音楽)のことです。
今回はその定義に囚われずに、ビジネス・仕事に直接すぐに役立つかは分からない本という意味で選びました。
ジャンル別で読んでもいいですし、気になった本があれば読んでみてください。
前回の記事はこちら: 2020年に読んだおすすめ本10選【ビジネス・仕事編】
社会・ノンフィクション3冊
・時間資本主義の時代(松岡真宏)
・社会的共通資本(宇沢弘文)
・デス・ゾーン(河野啓)
時間資本主義の時代(松岡真宏)
SNSや音声メディアも含めて、スキマ時間の奪い合いが始まっています。
そんな中、ビジネスとして、個人として、どのように時間を使うべきかが問われています。今後時間をどう使うのか。それを考える際のヒントとなる本です。
著者は人々の時間へのニーズを以下の2軸で解説しています。
・時間効率化:時短術など、いかに時間を効率的にするためのニーズ
・時間快適化:創造的な時間を過ごすためのニーズ
時間の本というと「時間効率化」の本が多いです。時間短縮のテクニックが書いてある本はそうでしょう。
しかし、この本は「時間効率化」「時間快適化」の両方に言及しています。時間そのものと資本主義を、大きな枠組みで捉え直しています。
個人で読む場合は、いかに自分の時間をつくるかを考える参考になります。ビジネスとして読む場合は、いかにユーザーの時間を奪うのかを考えるヒントになるでしょう。
【本書をおすすめしたい人】
・自分の時間価値を見直したい人
・これからの資本主義と時間について考えたい人
・社会やビジネスを大局的な流れから捉えたい人
【本書をおすすめしない人】
・手っ取り早い答えを求めている人
・時間よりもお金や資本を大事にしている人
・時短術のテクニックを求めている人
社会的共通資本(宇沢弘文)
経済学の本です。時間はかかりましたが、専門ではない僕でも最後まで読めました。
今までいろいろな方がお勧めしていた本書ですが、ずっと読まなかったことを後悔しています。
というのも、実際に読んでみて、著者の宇沢先生の「社会を良くしたい」という思いに心を動かされたからです。
とはいえ、本書は学術書に近いです。そのため、読むにあたっては、多少の経済学の知識があった方が読みやすいです。気になる箇所だけ読むだけでもいいと思います。
正直、この本の全てを1度で理解することは難しいです。即効性のあるテクニックがあるわけではありませんし、お金を稼ぐ方法が書いてあるわけではありません。
でも、だからこそ、社会を少しでも良くしたいと思う人には読む価値があります。
ただし、難しめの本なので、時間がない時に読むことはおすすめしません。
【目次より一部抜粋】
宇沢弘文 (2000)『社会的共通資本』岩波書店
序章 ゆたかな社会とは
第1章 社会的共通資本の考え方
第2章 農業と農村
第3章 都市を考える
第4章 学校教育を考える
第5章 社会的共通資本としての医療
第6章 社会的共通資本の金融制度
第7章 地球環境
【本書をおすすめしたい人】
・少しでも社会をよくしたいと思っている人
・資本主義と社会について考えたい人
・経済と環境について興味がある人
【本書をおすすめしない人】
・学術的な文章に抵抗がある人
・他人や社会について興味がない人
・お金を稼ぐヒントを得たい人
デス・ゾーン(河野啓)
登山家の栗城史多さんにまつわるノンフィクションです。栗城さんは、2018年に8度目のエベレスト登頂に挑戦し、滑落死してしまいました。
本書ではその真相とともに、なぜ無謀とも思える挑戦をしてしまったかが検証されています。
栗城さんの心の葛藤だけではなく、栗城さんに関わった関係者にも焦点が当たっています。多くの取材結果が反映されていることも特徴のひとつです。
読んでみて思ったことは、想像以上に闇が深いストーリーだということです。栗城さんは夢という言葉を多用して資金集めをしており、人々を魅了するインフルエンサーのような存在だったのでしょう。
一見キラキラした世界を生きているような人でも、お金や人からの期待にとりつかれてしまうと怖いということが学べます。
【本書をおすすめしたい人】
・登山家の栗城史多さんの生涯に興味がある人
・インフルエンサーや意識高い人の闇を知っておきたい人
・登山家の生き方(スポンサー集めなど)を知りたい人
【本書をおすすめしない人】
・キラキラした内容を期待している人
・ノンフィクションの硬い文章が嫌いな人
読書・学習に役立つ3冊
・リベラルアーツの学び方(瀬木比呂志)
・知的再武装 60のヒント(池上彰、佐藤 優)
・わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる(Dain)
リベラルアーツの学び方(瀬木比呂志)
教養やリベラルアーツとして何かを学び始めたい人向けの本です。リベラルアーツの基本的な学び方が記載されています。
個人的には、映画や音楽、漫画のリストを挙げてくれていたことが大きかったです。というのも、教養というと、どうしても「書物」や「美術」のイメージがあったからです。
リスト例 | |
文学 | トルストイ『イヴァン・イリイチの死』 |
映画 | ロベール・ブレッソン『抵抗』 |
音楽 | チャック・ベリー『ゴールド』 |
漫画 | 山科けいすけ『パパはなんだかわからない』 |
映画や音楽、漫画も含めて教養として捉えていいのだと思えて視野が広がった気がします。恥ずかしながら、僕はビジネス書を中心に読んできたからです。
そのため、教養やリベラルアーツに興味はあるけれど勉強することに抵抗感があるような人には、ガイドブック的な役割を果たす本だと思います。
【本書をおすすめしたい人】
・教養やリベラルアーツを学びたいが、何から始めればいいか迷っている人
・著者がおすすめする本や映画、音楽などのリストを知りたい人
・教養やリベラルアーツを学ぶ人の例を知りたい人
【本書をおすすめしない人】
・教養やリベラルアーツとは何かを深く追求する本だと思っている人
・著者ならではの変わった主張を求めている人
・科学や文学など、学びたい分野が決まっている人
知的再武装 60のヒント(池上彰、佐藤 優)
知の巨人と言われる池上彰氏と佐藤優氏との対談集です。「知」をテーマに、60個の学ぶヒントを示してくれています。
「知的再武装」とは、怖がる必要のないものと怖がるべきものを峻別すること
池上彰,佐藤優 (2020)『知的再武装 60のヒント』文藝春秋
再武装の言葉の通り、本書のターゲットは「45歳以降」の方です。45歳以降では、残りの時間の意識しつつも、いかに学んでいくか、何を捨てるべきかを提示しています。
僕はアラサーのサラリーマンですが、45歳未満の方々も読んで為になるヒントばかりでした。例えば、「生命・身体・財産」の順番で考えることを勧めていたり、学びたい分野を勉強する時間を見積もることを推奨していたりする点は参考になりました。
ただ注意点があります。著者の池上氏と佐藤氏は毎日数冊を読み、様々なニュースを目にしてアウトプットまで行ういわば「知の巨人」です。本書では彼らだからこそできるような難易度が高いヒントもあります。
そのため、自分の知的生活に活かすヒントが1つでも見つかればいいなと思うくらいが丁度いいです。
【本書をおすすめしたい人】
・45歳以上で知的活動が好きな人
・45歳未満で社会人として情報収集に迷っている人
・池上彰氏や佐藤優氏の書籍が好きな人
【本書をおすすめしない人】
・これを読めば、情報収集が完璧にできると思っている人
・簡単に手っ取り早く情報収集できると思っている人
・池上彰氏や佐藤優氏の専門的な内容を期待している人
わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる(Dain)
読書家で人気書評ブロガーのDain氏による本です。スゴ本とは「すごい本」のことを指します。本書では、Dain氏がどうやって「スゴ本」と出会えばいいのかを紹介してくれています。
例えば、スゴ本に出会うために「本ではなく人を探す」という視点はおもしろいなと思いました。もっと本を読みたいと思わせてくれます。
ただ、文体に特徴というか、過激な箇所があり、そこは読者によって好みがわかれるなと感じました。気になる方は、一度著者のブログを読んでから本書を手に取るか検討したほうがいいでしょう。
Dain氏のブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」
【本書をおすすめしたい人】
・著者のブログや書評が好きな人
・読書が好きで、読書の方法を広げたい人
・スゴ本に出会いたい人
【本書をおすすめしない人】
・著者のブログを読んで、文体などが合わないと思った人
・これを読めば凄い本がスラスラ読めると思っている人
・読書に関する本に興味がない人
文化・芸術について知る2冊
・日本マンガ全史(澤村修治)
・感性は感動しない(椹木野衣)
日本マンガ全史(澤村修治)
日本のマンガの歴史が学べます。歴史といっても、歴史の教科書のように事実が全て列挙されているわけではありません。
著者が重要だと判断した出来事やマンガ、作者に絞って書かれています。
主に出版社や、有名な作者や作品に焦点を当てているため、ざっくりとしたマンガの歴史を把握できるはずです。
ただし、古すぎる作品は全く知らないマンガも多く、臨場感があまり湧きませんでした。そのため、気になる箇所(時代)から読んでいくことを推奨します。
個人的には、第8章の「『少年ジャンプ』の時代」から読みました。「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」が40年に渡って連載し続けたことがいかにすごいのか、「ドラゴンボール」が当初は不人気だったことなど、興味がある箇所から読むことで本書にハマっていきました。
日本のマンガの歴史について長文で詳しく書かれているため、過去のマンガに興味ない方には期待外れかもしれません。
*補足:鬼滅の刃についても言及があります。以下に一部引用します。
[中略](鬼滅の刃は)ネット社会における、賑やかしいが表層的な人間関係へのアンチテーゼが込められているとも見える。主人公の妹・ヒロインの竈門禰豆子(かまどねずこ)の人物造形、周到に張られた伏線とともに、作品人気をもらたらした秘密といえよう。
澤村 修治 (2020)『日本マンガ全史』平凡社 *()は管理人が追記
【本書をおすすめしたい人】
・鬼滅の刃に至るまでのマンガの歴史に興味がある人
・時代別のマンガの名作を知りたい人
・出版やマンガ業界の人
【本書をおすすめしない人】
・漫画そのものが読めると思っている人
・硬い文章が嫌いな人
・売れるマンガの書き方などのノウハウを期待している人(書いてありません)
感性は感動しない(椹木野衣)
多摩美術大学教授で美術評論家の椹木野衣(さわらぎ のい)氏によるエッセイ集です。
エッセイ集ですが、冒頭の「感性は感動しない」という文章は、25校以上の大学入試で出題されているほど読み応えがあります。
感性を磨けば人生が豊かになる。そう思っている方ほど刺さる文章です。なぜなら、著者は「感性は磨けない」と主張しているからです。
感性とは何か、美術をどう見るか、自分なりの批評をするにはどうすればいいかを考えヒントになります。
【本書をおすすめしたい人】
・芸術鑑賞が好きな人
・感性について興味がある人
・自分なりの視点、批評、評論をしたいと思っている人
【本書をおすすめしない人】
・感性の磨き方を教えてもらえると思っている人
・ビジネス書だと思っている人
・ふわふわしたエッセイ集だと思っている人
関連記事1>> 感性とは何か?感受性との違いも含めて調べてみた
関連記事2>> 感性は論理と矛盾するのか?
実用書2冊
・お金の大学(両@リベ大学長)
・「繊細さん」の本(武田友紀)
お金の大学(両@リベ大学長)
「お金の大学」というタイトルですが、大学の教科書のように堅苦しいことは書いてありません。お金にまつわる*5つの力について、基本的なことを解説してくれています
*(お金の)5つの力:貯める、稼ぐ、増やす、守る、使う
著者の両@リベ大学長は、経営者であり、人気Youtuberです。本書はYoutubeで語られている内容がまとめられた一冊です。
どちらかというと「お金のことを学ぶためのガイドブック」と捉えた方がいいでしょう。
ただし、教養が身につくかというと微妙です。というのも、引っ越しで節約する方法や、副業でお金を稼ぐ方法が紹介されているなど、本書は実用書に近いからです。
でも、身近なお金にまつわる「仕掛け」を知ることも、ある意味では「教養」になるのではないかと考えて選びました。お金については、知らないと損することが多くあるからです。
この一冊だけで教養が身につくとは思えませんが、お金に関する興味・関心を広げる効果はあると思います。
本書を手がかかりに、副業や保険、投資の勉強を始めたい人にはオススメです。
【本書をおすすめしたい人】
・副業や保険、投資などお金に関することをざっくり理解したい人
・著者のYouTubeチャンネルをまとめたものが欲しい人
・身近なお金について勉強を始めたいと思っている人
【本書をおすすめしない人】
・お金について基礎知識がある人
・著者のYouTubeチャンネルで満足している人
・お金の知識について専門的な知識を必要としている人
「繊細さん」の本(武田友紀)
本書はHSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)について書かれています。著者の武田氏はHSPの方を「繊細さん」と名付け、人間関係や仕事でどのようにすれば楽になるかを示してくれています。
僕自身はHSPかどうか不明のため、本書に記載があった繊細さん向けの対処法が役立ったわけではありません。
しかし、仕事やプライベートの人間関係の中で、HSPかもしれないと思える方々がいらっしゃることを知れました。この点は、教養として、彼ら彼女らと上手く付き合うために必要な知識だと思えます。
「自分は疲れやすいな」と思っている方や、まわりに「細いことを気にしすぎるんじゃないかな」と思える人がいる方に読んでもらいたい本です。
【本書をおすすめしたい人】
・些細なことが気になってしまう人
・HSP(繊細さん)に興味がある人
・周りに繊細さんがいる人(仕事、プライベートなど)
【本書をおすすめしない人】
・HSP(繊細な人)について興味がない人
・繊細な人が周りにいない人
・他人に興味がない人
【まとめ】2020年に読んだおすすめ本10選【教養編】
この記事では、僕が2020年に読んだ方の中から、教養(リベラルアーツ)として役立ちそうな本をご紹介しました。
本来リベラルアーツは自由七科のことを指します。自由七科は三学(文法学、修辞学、論理学)と四科(算術、幾何、天文学、音楽)のことです。
今回はその定義に囚われずに、ビジネス・仕事に直接すぐに役立つかは分からないという意味で選びました。
おすすめの10冊(教養編)
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【社会・ノンフィクション3冊】
・時間資本主義の時代(松岡真宏)
・社会的共通資本(宇沢弘文)
・デス・ゾーン(河野啓)
【読書・学習に役立つ3冊】
・リベラルアーツの学び方(瀬木比呂志)
・知的再武装 60のヒント(池上彰、佐藤 優)
・わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる(Dain)
【文化・芸術について知る2冊】
・日本マンガ全史(澤村修治)
・感性は感動しない(椹木野衣)
【実用書2冊】
・お金の大学(両@リベ大学長)
・「繊細さん」の本(武田友紀)
以上です。少しでも参考になれば幸いです。
これで2020年に読んで良かった本のご紹介は終わりです。
2021年もたくさん読みたいと思います。
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